建設アスベスト給付金法が成立

2021年6月11日

建設現場で働く労働者等が石綿(アスベスト)を吸入することにより肺がんや中皮腫などを発症した健康被害に対し、給付金を支給することを定めた「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が6月9日の参議院本会議で可決、成立した。
同法は、建設現場でアスベストを吸い込み肺がんなどになった元建設作業員や遺族らが起こした裁判で最高裁が今年5月17日、国の賠償責任を認める判決を言い渡したこと、また、同判決を受け国と原告側が締結した「基本合意書」において、5月17日時点で未提訴の被害者に対する補償制度を設けることが盛り込まれたことを踏まえ制定された。 
法案は、6月2日に議員立法の形で提出され、同3日に衆議院本会議で可決、同9日に参議院本会議で可決、成立した。
法律の概要は以下の通り。

【特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律】
(1) この法律において「特定石綿ばく露建設業務」とは、日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務のうち、石綿の吹付けの作業に係る業務(昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間に行われたものに限る)及び屋内作業場であって厚生労働省令で定めるものにおいて行われた作業に係る業務(昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に行われたものに限る)をいうこと。
(2) 国は、特定石綿ばく露建設業務に従事することにより石綿関連疾病にかかった労働者、一人親方等またはその遺族であって認定を受けた者に対し、次に掲げる区分に応じた額の給付金を支給するとともに、新たに2から7までのいずれかに至った場合には、すでに受けた給付金との差額の追加給付金を支給すること。
1 石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のない者 550万円
2 石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症のある者 700万円
3 石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のない者 800万円
4 石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症のある者 950万円
5 中皮腫、肺がん、著しい呼吸器障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4または良性石綿胸水である者 1150万円
6 1及び3により死亡した者 1200万円
7 2、4及び5により死亡した者 1300万円
(3) 厚生労働大臣は、給付金等の支給を受けようとする者の請求を受けたときは、特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会に審査を求め、その審査結果に基づき、支給を受ける権利の認定を行うものとすること。
(4) 厚生労働大臣は、給付金等の支払に関する事務を独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」)に委託することができること。機構は、給付金等支払業務に要する費用に充てるための基金を設け、基金は、政府から交付された資金をもって充てるものとすること。
(5) 国は、国以外の者による損害賠償その他補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
(6) この法律は、一部を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

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